エストロゲンの刺激に対する反応

エストロゲンの刺激に対する反応には、大きく分けて二種類あります。ひとつはすばしこくて瞬間的な反応、もうひとつは悠然として思慮深い反応です。

エストロゲンの評価は常に変わります。よくよく調べた結果、新しい能力が発見された一方で、以前はあると思われていた能力がないとわかった例もあります。これまでは生命の始まりにエストロゲンが不可欠だと考えられてきました。

豚などのモデル動物で、胚が子宮に着床しようとするちょうどそのころに、細胞軍団がエストロゲンをピューッと噴出しているのが観察されたのです。仮の豚(胚盤胞)が正式な豚(胚)になるときに、エストロゲンが放出されるらしいのです。

どんなはたらきをするのかはわからなかったが、とにかく何かすごいことをしているようでした。胚の着床のときにエストロゲンの合成を阻害すると、豚の胎児は死んでしまったのです。

哺乳類の胚発生でエストロゲンが重要なはたらきをすると考えられたのには、別の理由もありました。アンドロゲンとアンドロゲン受容体がなくても、胚は何事もなく成長します。

ジェーン・カーデンのようなアンドロゲン不応症の女性たちがその完璧な証拠です。しかし、エストロゲンがなかったら? エストロゲンが体を循環した形跡がまったくない女性など見たことがないです。

1990年代半ばまで、エストロゲンなしの個体生成はあるはずがないと考えられていたのです。