FXにおける判断は難しい

2008年9月、米国大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが倒産し、その後、これをきっかけに世界の金融市場が暴落した「リーマン・ショック」という出来事がありました。

これでヘッジファンドは大きな損失を被り、解約による資金流出も増えて資産残高を大きく減らすなかで、投機筋の動きには以前のような力が感じられなくなっています。

シカゴの先物市場でも、FXの為替の建玉が一方向に大きく傾くことは少なくなり、以前に比べて注目度が低下していることは否めません。

とはいえ、米国の株価が上昇してくれば、FXの投磯節はリスクがとれるようになり、FX投資も活発になってくるはずです。そうなれば再び、彼らが米国の先物取引所でもっている建玉は、相場の方向性を判断するときの参考になるでしょう。

その際に注意しなければならないのは、発表されている建玉の数字はあくまで3日前のものであるということ。足の速いマネーが多い投機筋の建玉は、その後の3日間で大きく変わっている可能性もありますから、継続的なFX相場ウオッチが大切です。

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FXでマーケットを長く見続けていると、プロよりも一般の人の判断が結果として正しかったというケースにしばしば出合います。

なかでも印象的だったのが、1990年10月末に起こった「ワイド騒ぎ」です。当時の三重野康・日本銀行総裁は、バブル景気を押さえ込むこと(「バブルつぶし」といわれた)を目的に政策金利の引き上げを続け、プロの間では政策金利はまだ上がるとの予想が支配的でした。

この影響で、利付金融債(銀行が発行する債券)で運用する金融商品「ワイド」の利回りが年9.6%台という非常に高い水準になり、これを買い求める長い行列が銀行の前にできました。

「きっと金利は今がピーク。これから下がっていくだろうから、今が最大のチャンスだ」人々は直感でそう判断して「ワイド」に殺到したわけです。実際にそうなったのですから驚きです。

また近年では、個人向け国債(固定金利5年物)の利率が上昇して2007年6月に1.50%になった際に、事前予想を大幅に上回る売れ行きになるという出来事がありました。

同年2月には、日本銀行が追加利上げをしているため、プロの間では、金利はもっと上がるだろうという見方も少なくありませんでしたが、夏以降、長期金利は急速に下がり、人々の目のほうが正しかったことが証明されました。

FXの為替相場関連でも同じことがいえます。

2008年12月、大手銀行の外貨ショップに夜7時の閉店間際まで外貨のトラベラーズチェック(TC)や現金を買おうと、多くの人が並びました。

このときもやはり、「円高は今がピークだろうから、急いで外貨に換えておこう」と人々は直感でそう判断したのです。

この月の17日、ドル/円相場は87円13銭を記録,プロの間では円キャリートレードの解消が続き、円高がさらに進むだろうという見方が有力でした。

ところがどうでしょう。実際には翌2009年1月に87円10銭をつける場面はあったものの、もう一段の円高は起こっておらず(2009年10月現在)、一般の人々の相場観の鋭さが浮き彫りになったのです。

プロなのに、なぜ相場予想が外れるのでしょうか。 1つには、あまりに多くの情報をもちすぎているために相場観が安定せず、一種の「器用貧乏」に陥ってしまっているからです。

また逆に、特定の情報にこだわって視野が狭くなってしまうということもあるでしょう。