ダイエットに失敗した肥満が道徳の問題としてとらえられる

20世紀になる前のアメリカ医学は、平均体重を超える人々に対して、安定した、変わらない体重を維持するように指導していました。

目標は、健康と節制された食欲であり、スリムさではなかったです。当時、平均体重を超えた分は、病気やケガなど緊急のときに備えたエネルギーの蓄えであると考えられていました。

以上のような考えが変わるきっかけとなったのは、牧師であったシルヴェスター・グレアムの一連の講演でした。19世紀半ば、彼は、聖書を片手に独自の健康学を説いて全米を回ったのです。

彼の健康学は、とくに菜食を勧めたことで知られています。グレアムは、「大食」をすべての悪の中でもっとも罪深いとしました。

そして、肥満は大食の証拠であると人々に説き、ダイエットに失敗した肥満者に対しては、悔い改めのしるしとして減量するようにさとしました。

このグレアムの影響は大きく、アメリカでは以後、ダイエットに失敗した肥満が道徳の問題としてとらえられるようになるのです。